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2026年ルーマニアSRL設立ガイド:資本金と手続きの完全解説
完全ガイド:新資本金、必要書類、および最新費用
更新日: 2026年1月 | 著者: リカルド・パンティリモン | 読了時間: 12分
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はじめに
SRL(有限責任会社)の設立は、柔軟性と資産保護を提供するため、ルーマニアにおいて最も一般的な事業形態であり続けています。しかし、2026年にはLegea nr. 239/2025による重要な法改正があり、最低資本金に関する要件が根本的に変更されます。これは、ルーマニア経済の健全性と企業の透明性を高めることを目的とした政府の広範な戦略の一環です。外国人投資家や新規事業を検討している方々にとって、これらの変更点を正確に理解し、適切に対応することが成功の鍵となります。
このガイドは、2026年1月1日施行の現行法に基づくSRL設立の完全な手順を提示します。これには、新たな最低資本金の基準、必要書類、関連費用、および避けるべき一般的な誤りが含まれます。本記事では、会社法(Legea nr. 31/1990)の修正点や、商業登記所(Oficiul Național al Registrului Comerțului - ONRC)の手続きに関する最新情報に基づき、詳細かつ実践的な情報を提供します。
🆕 2026年法改正の最新情報
Legea nr. 239/2025は、差別化された資本金要件を導入します。新規設立会社には500レイ、売上高400,000レイを超える会社には5,000レイ。既存会社に対する遵守期限は2年です。この法改正は、特に中小企業(IMM)に対する支援と、より大規模な事業体に対する財務的安定性の強化という二重の目的を持っています。従来の最低資本金1レイから大幅な変更となるため、計画を立てる際には十分な注意が必要です。
1. 2026年の新しい資本金要件
公共資源の回復および効率化策を設定するLegea nr. 239/2025は、有限責任会社の資本金制度を大幅に修正します。この変更は、従来の「1レイ」という非常に低い資本金要件が、企業の信頼性や債権者保護の観点から問題視されてきた背景があります。新しい制度は、企業の経済的実体をより適切に反映し、市場における責任感を高めることを目指しています。
1.1. 新規設立会社のための資本金
Legea nr. 239/2025の施行に伴い、新規設立SRLの最低資本金は500レイとなります。この金額は以前の最低額1レイから大幅に増加しますが、ほとんどの起業家にとって依然としてアクセス可能です。この決定は、新規事業者が市場に参入する際の初期障壁を過度に高くすることなく、ある程度の真剣さと準備を確保することを意図しています。500レイは約100ユーロに相当し(為替レートによる)、小規模なスタートアップ企業にも対応可能な水準です。この資本金は、会社の設立時に現金または現物出資(動産や不動産、知的財産権など、専門家による評価が必要)で全額払い込む必要があります。
1.2. 年間売上高400,000レイの基準と既存企業への影響
年間売上高が400,000レイを超える会社には、最低資本金5,000レイを保有する義務が課せられます。この措置は、市場で活動する会社の財務的信頼性を強化することを目的としています。400,000レイは、およそ8万ユーロに相当する金額であり、これはルーマニアの中小企業にとって中規模以上の事業体と見なされる水準です。既存のSRLについては、この要件が発効してから2年間の猶予期間が設けられています。これにより、企業は十分な準備期間をもって資本金を増強したり、事業計画を見直したりする機会が与えられます。期間内に対応しない場合、罰則が科される可能性があります。Legea nr. 31/1990 Art. 165 に基づき、資本金の減少は会社の解散事由となる可能性もあるため、既存企業はこの条項に特に注意を払う必要があります。
表:2026年の資本金要件
| 状況 | 最低資本金 | 期限 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 新規設立SRL | 500レイ | 即時 | 設立申請時に商業登記所へ提出する資本金の預金証明が必要。 |
| 既存SRL、売上高 > 400,000レイ | 5,000レイ | 2年 | 2年間の猶予期間内に資本金増強の手続きを完了する必要がある。未達成の場合、商業登記所による強制措置の対象となる可能性がある。 |
| 既存SRL、売上高 < 400,000レイ | 変更なし | 該当なし | 財務状況に応じて、自主的な資本金増強は可能。 |
2. SRL設立に必要な書類と詳細な手続き
設立申請書類は、社会拠点(登記上の住所)が所在する郡の商業登記所(Oficiul Registrului Comerțului de pe lângă Tribunal – ORC)に提出する必要があります。必要な書類の完全なリストと詳細な手順は以下の通りです。ORCのウェブサイト(onrc.ro)は、これらの書類のテンプレートや最新のガイドラインを提供しています。
2.1. 必須書類の詳細
2.1.1. 登録申請書 (Cerere de înregistrare)
標準フォームはORCで入手するか、公式サイトwww.onrc.roからダウンロードできます。申請書は完全に記入し、設立者または代理人が署名する必要があります。この申請書には、設立する会社の基本情報(名称、所在地、事業目的、資本金、管理者情報など)が要約されています。正確な情報を提供することが不可欠であり、誤記は手続きの遅延につながります。
2.1.2. 設立定款 (Actul constitutiv)
会社の運営規則を定める基本的な文書です。これには、以下の詳細を含める必要があります。
- 名称と法的形態: 会社名は国立商業登記所(ONRC)で予約・確認する必要があります(予約番号を記載)。SRLである旨を明記します。
- 社会拠点 (Sediu social): 会社の登記上の住所。郵便番号、番地、郡、市町村を正確に記載。
- 事業目的 (Obiect de activitate): 主要な事業活動および副次的な活動をCAENコード(Clasificarea Activităților din Economia Națională - ルーマニアの国民経済活動分類)に基づいて具体的に記載します。主要CAENコードは一つのみ記載可能ですが、副次コードは複数記載できます。
- 資本金と持分の配分: 資本金の総額(2026年の新要件に基づく)、各株主の出資額、および持分の割合を明確に示します。例えば、「総資本金500レイのうち、A氏が250レイ(50%)、B氏が250レイ(50%)出資する。」と記載します。
- パートナーと管理者の身元情報: 各株主と管理者の氏名、国籍、住所、身分証明書番号、CNP(Personal Identification Number)またはパスポート番号を記載します。法人の場合、名称、所在地、登録番号、代表者情報を記載します。
- 会社の存続期間: 通常は「無期限」と設定されますが、特定のプロジェクトのために「有限」とすることも可能です。
- 利益分配および損失負担の方法: 定款で明確に定める必要があります。
- 会社の解散および清算の手順: 法令に準拠した手続きを記載します。
- 調停条項 (Clauza de arbitraj): 必要に応じて、紛争解決のための調停条項を含めることができます。
設立定款は、弁護士または公証人によって作成されることが一般的です。特に外国人が株主や管理者となる場合、ルーマニア語の法律用語に不慣れであるため、専門家の支援が推奨されます。
2.1.3. 社会拠点の証明 (Dovada sediului social)
賃貸契約書(contract de închiriere)、使用貸借契約書(contract de comodat)、または所有権証書(titlu de proprietate)。これらは有効な期間が記載され、ORCで登録する際に有効なものである必要があります。 住宅建物内のスペースを登記上の住所として使用する場合、目的変更のための管理組合の同意(acordul asociației de proprietari)と、建物の所有者(マンションの他の居住者)の同意書(acordul vecinilor)が必要です。これは、ビジネス活動が居住環境に与える影響を考慮するための措置です。特に外国人が物件を所有していない場合、現地の不動産業者や弁護士を通じて適切な契約を結ぶことが重要です。
2.1.4. 資本金の証明 (Dovada depunerii capitalului social)
ルーマニアの銀行機関への預金通帳の写しまたは預金領収書。資本金は設立時に全額払い込む必要があります。銀行は、会社の設立前でも「会社設立のための口座(cont provizoriu pentru constituire societate)」を開設するサービスを提供しています。口座開設には、会社の予約名、設立者の情報、そして設立定款の草案が必要となる場合があります。
2.1.5. 署名見本(管理者) (Specimene de semnătură ale administratorilor)
会社の管理者となる者は、公証人の面前またはORCで直接、署名見本を提出する必要があります。これは、その人物が会社を法的に代表する権限を持つことを証明するものです。外国人の場合、ルーマニア国内で公証人の認証を受けるか、自国の公証人によって認証を受け、ハーグ・アポスティーユを付与した上で、ルーマニア語の正式な翻訳(Traducere legalizată)を添付する必要があります。
2.1.6. 自己宣誓書 (Declarații pe proprie răspundere)
パートナーおよび管理者として、以下の事項に関する自己宣誓書の提出が必要です。
- 法的要件の遵守: 会社法(Legea nr. 31/1990) Art. 6, Art. 153^10, およびその他の関連法規に基づく、会社設立および管理者としての資格要件を満たしていること。具体的には、特定の犯罪歴がないこと、破産手続き中の身分でないことなどが含まれます。
- 税務拠点: 税務上の居住地に関する情報。
- 衛生、環境保護、PSI(Prevenirea și Stingerea Incendiilor - 火災予防および消火)の基準の遵守: 会社の事業活動がこれらの基準を満たすことを約束するものです。これは、特定の事業活動(例:食品加工、製造業)を行う場合に特に重要であり、必要な許認可を取得するための前提となります。
2.2. 追加書類(該当する場合)
- 非EU外国人市民の場合: 居住許可証(permis de ședere)またはルーマニアでの就労権の証明(drept de muncă în România)。場合によっては、観光ビザで入国し、会社設立後に居住許可を申請することも可能ですが、これはプロの法律アドバイスを受けて計画する必要があります。
- 設立する法人の場合: その法人の設立証明書(certificat de înregistrare)、定款(act constitutiv)、現在の状況証明書(certificat constatator)および当該法人の管理者がルーマニアで会社を設立するための決議(hotărâre a organului de conducere)。これらは全てルーマニア語の正式な翻訳が必要となります。
- 代理人が手続きを行う場合: 設立者(または法人設立の場合、その代表者)からの公証人による委任状(procură specială autentificată)。委任状には、代理人がSRL設立に関する全ての行為を行う権限が明記されている必要があります。外国で作成された委任状は、ハーグ・アポスティーユまたは外交的認証を付与し、ルーマニア語に正式に翻訳する必要があります。
- CAENコードに特別な許認可が必要な場合: 特定の事業活動を行うためには、事前に特別なライセンスや許可が必要です(例:金融サービス、医療、教育)。これらの許認可を証明する書類もORCに提出する必要がある場合があります。
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3. SRL設立の手順とタイムライン
ルーマニアでのSRL設立は、以下の主要なステップで構成されます。各ステップには特定の期間と関連費用が発生します。
3.1. 手順の概要
- 会社名の確認と予約:
- 国立商業登記所(ONRC)のウェブサイトで希望の会社名が利用可能か確認し、予約します。通常、3つの候補名を提示します。
- 期間: 1〜2営業日
- 費用: 約72レイ(予約手数料)。
- 社会拠点の確保:
- 賃貸契約、使用貸借契約、または所有権に基づき、登記上の住所を確保します。必要に応じて、管理組合の同意書などを取得します。
- 期間: 数日〜数週間(契約交渉による)
- 設立定款の作成と認証:
- 弁護士に会社定款の作成を依頼します。全ての株主と管理者の情報、事業目的、資本金構造などを正確に記載します。
- 完成した定款は、公証人の認証を受けるか、または弁護士が保証します。
- 期間: 3〜5営業日
- 資本金の払い込み:
- ルーマニアの銀行で会社設立のための仮口座を開設し、最低資本金(2026年からは500レイ)を払い込みます。
- 期間: 1〜2営業日
- 費用: 銀行手数料(少額または無料)。
- 署名見本の作成:
- 管理者は公証人の面前で署名見本を作成するか、ONRCで直接行います。
- 期間: 1営業日
- 費用: 公証人費用(約100〜200レイ)。
- 必要書類の収集、準備と提出:
- 前述の全ての必須および追加書類を収集し、ルーマニア語への翻訳が必要なものは認証翻訳を行います。
- 商業登記所(ORC)に設立申請書と全ての書類を提出します。
- 期間: 収集に数日、提出は1日。
- 費用: 認証翻訳費用(文書量による)、印紙代など。
- 商業登記所(ORC)による審査と登録:
- ORCの審査官が提出された書類を審査し、法令遵守を確認します。
- 問題がなければ、会社がCommercial Registerに登録され、登録証明書(Certificat de înregistrare - CUI, Registrul Comerțului番号)が発行されます。
- 期間: 3営業日以内(通常)。ただし、書類の不備があった場合は、補正期間が与えられ、その分遅延します。
- 費用: 登録手数料(Legea nr. 265/2022により無料化されたものが多いが、特定の追加サービスには費用が発生する場合あり)。
- VAT登録(必要な場合):
- 特定の事業活動(例:EU内の取引、高売上高)の場合、VAT(付加価値税)登録が必要になります。これは通常、ORCへの申請と同時に行うか、会社設立後に税務当局(ANAF)に別途申請します。
- 期間: 5〜15営業日(ANAFでの審査による)。
- 費用: 無料。
3.2. 設立費用およびタイムラインの比較表(目安)
以下の表は、一般的なSRL設立にかかる費用と時間の目安を示しています。これらの金額は概算であり、具体的な状況や選択するサービスプロバイダーによって変動します。
| サービス項目 | 概算費用(レイ) | 概算期間 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 会社名予約 | 72 | 1-2営業日 | ONRCでのオンライン予約または窓口での申請。 |
| 設立定款 | 300 - 800 | 3-5営業日 | 弁護士または公証人による作成および認証。複雑な場合や外国籍株主が多い場合は高くなる可能性がある。 |
| 資本金の払い込み | 500 (最低)* | 1-2営業日 | 最低資本金500レイ。銀行手数料は無料または少額。 |
| 署名見本 | 100 - 200 | 1営業日 | 公証人認証費用。 |
| 社会拠点確保 | 変動あり | 数日 - 数週間 | 賃貸料、使用貸借契約書作成費用。管理組合同意書取得費用など。 |
| 認証翻訳 | 50 - 200/ページ | 2-5営業日 | 外国語書類がある場合のみ。文書の複雑さと量による。 |
| 商業登記所申請手数料 | 基本的に無料 | 3営業日 | Legea nr. 265/2022により多くのORC手数料は廃止。特別なサービスには費用が発生する場合あり。 |
| 合計概算費用(法務・行政手続きのみ) | 1,000 - 3,000 レイ | 約5 - 15営業日 | 上記は、社会拠点の費用(賃料など)やVAT登録費用は含まない。これはあくまで行政手続きにかかる費用。弁護士による総合的なサポートを含む場合は別途見積もり。 |
* 既存SRLで売上高が400,000レイを超える場合は5,000レイ。 緊急手続きなど、特定の追加サービスには別途手数料が発生する場合があります。
4. 設立後のコンプライアンス要件と法定義務
SRLの設立は始まりに過ぎません。会社がルーマニアの法規に準拠して運営されるためには、設立後も継続的なコンプライアンス義務を果たす必要があります。国際的な投資家にとって、これらの義務を理解し、現地の専門家(会計士、弁護士)と協力することが極めて重要です。
4.1. 会計および税務上の義務
- 会計帳簿の記帳: ルーマニアの会計基準(Standarde Românești de Contabilitate - SRC)に従い、正確な会計帳簿を継続的に記帳する必要があります。
- 財務諸表の作成と提出: 毎年、貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を作成し、財務省(Ministerul Finanțelor Publice)に提出する必要があります。通常、会計年度終了後150日以内が期限です。
- 税金の申告と納付:
- 法人税(Impozit pe profit / Impozit pe veniturile microîntreprinderilor): ルーマニアでは、多くの小規模企業が売上高に対する税金(Microenterprise Tax, 1%または1%)を選択できます。年間売上高が50万ユーロ(約250万レイ)を超える場合や、特定の事業活動を行う場合は法人税(16%の固定税率)が適用されます。
- VAT(TVA - Taxa pe Valoarea Adăugată): 売上高が30万レイを超える、またはEU内の取引を行う場合など、VAT登録が義務付けられます。標準税率は21%です。
- 給与関連税: 従業員がいる場合、給与にかかる所得税(10%)および社会保障拠出金(年金、健康保険、失業保険など)を源泉徴収し、申告・納付する必要があります。
- 電子請求システム(e-Factura): 2024年1月1日より、ルーマニア国内事業者間のB2B取引において、e-Facturaシステムを通じた電子請求書の発行が義務付けられています。これは、税務当局による取引の透明性向上と効率化を目的としています。外国企業もルーマニアで事業を行う際にはこのシステムに準拠する必要があります。
4.2. 商業登記簿(Registrul Comerțului)への情報更新義務
- 定款の変更: 会社の名称、社会拠点、事業目的、資本金、株主構成、管理者などに変更があった場合、商業登記所(ORC)に変更登記申請を行う必要があります。これには、新たな決議書や公証人の認証が必要となる場合があります。例えば、社会拠点の変更には新たな賃貸契約書の提出が必要です。
- 年次報告書の提出: 会社の状況に関する年次報告書をORCに提出する義務があります。
4.3. データ保護(GDPR)
- 個人情報保護: ルーマニアで事業を行う全ての会社は、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠する必要があります。これは、従業員、顧客、サプライヤーの個人データを収集、処理、保存する方法に影響します。データ保護責任者(DPO)の任命が必要な場合もあります。
- データ処理の登録: 必要な場合、国内のデータ保護監督機関(Autoritatea Națională de Supraveghere a Prelucrării Datelor cu Caracter Personal - ANSPDCP)にデータ処理活動を登録する必要があります。
4.4. 労働法に関する義務
- 労働契約の登録: 従業員を雇用する場合、個別の労働契約を締結し、政府のオンラインシステム(ReGES)に登録する必要があります。
- 最低賃金の遵守: ルーマニアの定める最低賃金および業界別の団体交渉協定(CIM - Contract Colectiv de Muncă)がある場合はそれに従う必要があります。
- 労働安全衛生: 労働安全衛生に関する法令(Legea 319/2006)を遵守し、従業員に安全な労働環境を提供する必要があります。
4.5. 許認可の取得
特定の事業活動(例:レストラン、医療クリニック、建設、金融サービス)には、地方自治体や特定省庁からの追加の営業許可やライセンスが必要となります。事業を開始する前に、これらの許認可が全て取得されていることを確認する必要があります。
5. 一般的な誤りとその回避策
SRL設立プロセスは比較的単純ですが、ルーマニアの法制度や行政手続きの特性を理解していないと、時間と費用のかかる誤りを犯す可能性があります。
5.1. 会社の名称予約に関する誤り
- 誤り: 会社名の予約をせず、設立定款に記載して提出してしまう。
- 回避策: ONRCのオンラインシステムで事前に会社名の利用可能性を確認し、優先的に予約番号を取得します。予約は通常3ヶ月間有効です。複数の候補名を準備しておくことをお勧めします。
5.2. 社会拠点に関する誤り
- 誤り: 居住用アパートを事業拠点とする際に、管理組合や隣人の同意を得ずに提出する。または、契約書がORCの要求する形式を満たしていない。
- 回避策: 賃貸契約書、使用貸借契約書、または所有権証書がORCの規定に完全に準拠していることを確認します。賃貸契約の場合、所有者の情報、物件情報、賃料、契約期間などが明確に記載され、必要に応じて公証人の認証を受けます。居住用物件の場合、必ず管理組合および建物の他の所有者からの同意を得て、書面として提出します。
5.3. 設立定款の不備
- 誤り: 設立定款に必要事項が記載されていなかったり、情報が不正確であったりする。特にCAENコードの選択ミスや、資本金、持分率の不正確な記載。
- 回避策: 経験豊富なルーマニアの弁護士に定款の作成を依頼します。事業活動に合致するCAENコードを正確に特定し、将来の事業拡大を見越して関連するCAENコードも追加することを検討します。
5.4. 資本金の払い込み不足または証明の不備
- 誤り: 新しい最低資本金要件(500レイ)を知らずに、古い基準(1レイ)で払い込みを行ってしまう。または、銀行からの承認された預金証明を提出しない。
- 回避策: Legea nr. 239/2025の新しい資本金要件を厳守し、銀行で指定の金額を払い込みます。銀行が発行する公式な預金証明書(Extras de contまたはConfirmare de depunere a capitalului social)を必ず取得し、申請書類に添付します。
5.5. 外国人投資家向けの追加書類の欠落
- 誤り: 非EU圏の外国人株主や管理者が必要とする居住許可証、パスポートの認証翻訳、または大使館や領事館での認証手続きを怠る。
- 回避策: 国籍に応じて必要な追加書類(居住許可証、ビザ、認証翻訳、アポスティーユなど)を事前に確認し、準備します。特にパスポートの認証翻訳は必須です。海外で取得した書類は、ハーグ・アポスティーユまたは外交的認証が必要となる場合があります。
5.6. 提出書類の不完全性または不正確性
- 誤り: 申請書類に署名漏れがある、コピーが認証されていない、または不鮮明である。
- 回避策: 提出する全ての書類が完全で、正確であり、要求される署名や認証が全て施されていることを二重三重に確認します。疑問がある場合は、ORCのウェブサイトのチェックリストを参照するか、弁護士に確認を依頼します。
6. コンプライアンスチェックリスト(設立後)
SRL設立後、以下の主要なコンプライアンス要件を定期的に確認し、遵守することが重要です。
- 商業登記簿(ORC)への変更登記:
- 会社の名称、社会拠点、事業目的、管理者の変更はORCに速やかに届け出ていますか?
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7. よくある質問(FAQ)
Q1: 2026年からSRLの最低資本金が500レイに引き上げられたのはなぜですか?
A1: Legea nr. 239/2025によるこの法改正は、ルーマニア経済全体の財務的信頼性を向上させ、企業の責任感を強化することを目的としています。従来の1レイという最低資本金は、企業の健全性や債権者保護の観点から不十分と見なされていました。500レイは、起業家にとってアクセス可能な水準を維持しつつ、ある程度の初期投資を求めるものです。
Q2: 既存のSRLも最低資本金5,000レイに増強する必要がありますか?
A2: 年間売上高が400,000レイを超える既存のSRLは、Legea nr. 239/2025の発効後2年以内に最低資本金を5,000レイに増強する義務があります。売上高が400,000レイ未満の既存SRLについては、最低資本金の変更義務はありませんが、財務状況に応じて自主的な増強は可能です。
Q4: SRL設立にかかる期間はどのくらいですか?
A4: 必要な書類が全て揃っていれば、商業登記所(ORC)での審査と登録は通常3営業日以内に行われます。ただし、書類の準備(弁護士による定款作成、公証人認証、認証翻訳など)に数日〜数週間かかる場合があるため、全体では最短1週間、通常2〜3週間程度を見ておくのが現実的です。書類に不備があった場合は、さらに時間がかかる可能性があります。
Q5: 外国人でもルーマニアでSRLを設立できますか?
A5: はい、外国人でもルーマニアでSRLを設立することは可能です。EU圏外の外国人市民の場合、パスポートの認証翻訳、場合によっては居住許可証やビザの提示が必要となることがあります。また、海外で発行された書類にはハーグ・アポスティーユまたは外交的認証が必要となる場合があります。ルーマニアの法律事務所やコンサルタントを雇い、プロセスを円滑に進めることをお勧めします。
Q6: 設立したSRLの社会拠点はどのように証明すればよいですか?
A6: 社会拠点は、賃貸契約書、使用貸借契約書、または所有権証書などの法的文書で証明する必要があります。これらの文書はORCに提出する際に有効なものでなければなりません。居住用スペースを登記上の住所として使用する場合は、建物の管理組合および隣人の書面による同意が必要となります。
Q7: SRL設立後、他にどのような義務がありますか?
A7: SRL設立後には、会計帳簿の記帳、年次財務諸表の作成と提出、法人税またはマイクロエンタープライズ税、VAT(必要な場合)などの税金の申告と納付、従業員がいる場合の労働契約登録と社会保障拠出金の納付、およびデータ保護(GDPR)への準拠など、多くの継続的なコンプライアンス義務が発生します。特定の事業を行う場合は、追加の営業許可やライセンスが必要になります。
Q8: SRL設立時に弁護士を雇う必要はありますか?
A8: 法的に必須ではありませんが、特に外国籍の投資家やルーマニアの法制度に不慣れな方にとっては、弁護士を雇うことを強く推奨します。弁護士は、定款の作成、必要な書類の収集と確認、ORCへの申請手続きの代行、法的なアドバイスなど、設立プロセス全体をスムーズに進める上で不可欠なサポートを提供します。これにより、時間と労力を節約し、潜在的な誤りを避けることができます。
Q9: 会社名を予約するにはどうすればいいですか?
A9: ルーマニア国立商業登記所(ONRC)のウェブサイトからオンラインで会社名の利用可能性を検索し、希望する名前を予約することができます。通常、3つの候補名を提案し、その中から利用可能な名前が予約されます。予約は一定期間(通常3ヶ月)有効です。この予約番号は設立定款に記載する必要があります。
Q10: 設立定款のCAENコードとは何ですか?
A10: CAENコード(Clasificarea Activităților din Economia Națională)は、ルーマニアの国民経済活動分類コードです。これは、会社がどのような事業活動を行うかを特定するための標準的なコードシステムです。設立定款には、会社の主要な事業活動を示すCAENコードを一つ指定し、さらに副次的な活動を示す複数のCAENコードを含めることができます。正確なCAENコードの選択は、将来の許認可や税務上の分類に影響するため